TOPICS

#ALL

サスティナブルのコンセプトと買い物をする時の高揚感を大切にする福留聖樹とFirsthand

今や多種多様なカテゴリーで課題とされているサスティナブルな取り組み。中でもファッションに関しては課題点も多く、新しい動きを実施するブランドも増えてきました。そのようなシーンの中で、早い段階から継続的に衣類を循環させることに着目してスタートしたショップ、『Firsthand』。そのコンセプターである福留聖樹さんは、日本全国を訪れる中でアップサイクルな事業の必要性を感じていたのだとか。その真意を形にしたFirsthandについて語ってくださいました。

普通の商品を買い物する時の高揚感を
環境に配慮した商品でも感じてほしい

様々なファッション、ライフスタイル事業を展開するデイトナ・インターナショナルにおいてもここ数年、新しい展開として加わったサスティナブルやSDGsに関する動き。それをこれまで培った経験を基にファッションと結びつけるために、福留さんがコンセプトを考え結晶となったのが、Firsthand。その存在意義や発信したいこととは?

―改めて、Firsthandのコンセプト、そしてスタートさせるに至った経緯を伺わせてください。

僕が物づくりに携わることが2015年くらいから多く、様々な世界の工場や日本の産地などを巡っていました。その時にいろんなものが大量に余っていたり、そこでの労働環境の問題だったりがひとつの課題として見えてきたんです。その課題を新しいデザインやクリエイティブの力で新しい価値として蘇らせ、社会課題の解決として繋げられないだろうか、と思ったところが始まりになります。
Firsthandで扱っている商品はファッションを軸としたものが多いのですが、コンセプトは“サスティナビリティとアートとファッション”。でも今の僕らの生活は、コロナ禍で家の中で過ごすことが多くなりましたし、買うものも変わってきていると思います。そこでライフスタイル全般をどう提案できるかというのも大事にしています。

―日本だけに限らず世界中のアパレルの工場を中心に見て回られていた中で、生活に通ずるいろんなものが見えてきたのですね。

僕の中ではその意識は強かったのですが、当時は産地の方にはまだ薄くて。そこで産地での環境や電力の使い方などを変えることで、その産地の魅力を上げていきましょうといったプロジェクト作成も実際行ったりしました。今では国の政策も変わってきて、地方自体にも目を向けてくださるようになってきています。
Firsthandでのセレクト商品でいえば、CFCLというブランドのデザイナーの高橋さんは、透明性のあるサプライチェーンを含めた再生可能エネルギーを使っていたりします。今は自分がやりたかったことが周りを含めて意識し始めていて、ちょっとずつですけどいい世の中になろうとしているのを感じているので、その点は嬉しいですね。

―自治体と企業が手を組む姿をよく見かけるようになりましたよね。

そうですね。地域のコミュニティーは大事だと思います。一例ですが、僕らの会社、デイトナ・インターナショナルのフリークスストアの本店が、茨城県の古河市にあります。この本店は、コロナ禍においてお客様が減ってしまっていたのですが、地域に根ざしたリニューアルをしたことで、前年と比べて数百パーセントの来客数の増加へと変わったんです。その結果を見て、地域と結びつきながら価値創造をしていく大切さを実感しましたね。

―なるほど。次にFirsthandのメインとも言えるキーワード“サスティナブル”が、ここ数年でファッションとは切り離せないものとなってきています。早い段階から着目されていた福留さんにとって、サスティナブルが謳われているシーンの中で、Firsthandがどういった役目を担っていくと思われますか?

もちろん、環境に配慮し社会課題を解決するということは大事にしています。でも一番大事なのは、扱っている商品を見ていただいた時や買っていただいた時に、感情が高まっていただけるかどうかだと思っているんです。あくまでもこれいいよねって買ってみた結果として、その商品が環境に配慮されていたり、社会課題の解決に繋がるのが大切。Firsthandはその点を重要視してスタートさせているので、什器も含めて「なんなんだこのお店は!」と思ってもらえることを大事にしています。環境に配慮した商品であっても、そうでない商品を購入する時と同じ高揚感を遜色なく感じてほしいです。

―確かにお客様の目を引く什器がありますね。什器を含めた店内の特徴を聞かせてください。

什器に関しては、別な場所で使用されていたものをまったく違うデザイン手法によって作り直して提案しています。“解体と再構築”をテーマにしているので、以前の形とは別のものとしてデザインしているんですよね。他では見たことがないものということも大切にしていて、デザインで目を引いてショップに入っていただき、実際に商品を手に取ってもらい、そしてその商品の背景は社会課題解決につながっている、ということを知ってもらえたら嬉しいです。
他の特徴ですと、レジのあるバックスペースをお客様からも見えるようにしています。これは現在、サプライチェーン含めた透明性というものが大事になってきているのが理由です。他店ですとバックスペースは、スタッフが休憩したりするスペースだと思いますが、Firsthandでは商品ストックが見えていたりなど、ありのままの姿を見てもらうことが大切かなと考えています。そういった仕掛けもあるので、Firsthandは実験の場だとも思っています。

―その実験の場でもあるFirsthandをMIYASHITA PARKの中に構えようと思われたのはなぜでしょうか?

1980〜1990年代の渋谷が盛り上がっていた時のカルチャーを自分が体験していたので、今また渋谷が盛り上がってほしいという想いもあります。さらにその中でも宮下公園は、渋谷のシンボルのひとつだと考えていて、その場所で自分たちがやりたいことをできるのも魅力的でした。
そして現在の社会課題は、若い方たちでも興味を持っている人が多いんです。そこで僕らが若者の街である渋谷で、アートやファッションで共感してもらえるものが提案できるので、若い世代と一緒に成長できるショップを目指せるというのにも引かれました。

―日本の中でも世界に向けてカルチャーを発信する渋谷と、ずっと回られてきた地方のタッチポイントにもなりえますよね。

そうなんですよ。今度、愛知県一宮市を中心にした尾州地域にある機屋さんと一緒に、新しい素材を使ったカスタムのバッグを作るイベントを行います。さらにその機屋さんが使う電力を、再生可能エネルギーに変えましょうという取り組みもします。なので、素材は環境にいいところで作られていて、さらに自分らしさを表現できるカスタムもできるということで、渋谷と地方を繋げている感じもしています。

―そのようなイベントなど、このFirsthandから発信したいことは他にありますか?

お買い物は楽しいですよ、ということは発信していきたいです。あと渋谷のカルチャーは、海外からも目を向けられているので、その渋谷でどういった表現をするべきかも考えています。10月からは、ヴィーガンやオーガニックなどの食品イベントも開催していく予定なので、ライフスタイル全般で、日々の生活で身近にあることで興味を持ってもらえることを提案していきたいですね。
そして渋谷にはいろんな商業施設があるので、他の施設といった垣根を超えた連携を取って大きなイベントの開催をするなんていうのも楽しそうですよね。その連携を取るためのキーワードになりやすいのは、環境配慮や社会課題解決といったことだと思いますので。

―ではMIYASHITA PARKという施設だからこそやってみたいことはありますか?

都心にありながらも施設として大きいので、ゆったりと過ごせる希少な場所だと感じています。そして屋上には公園があるので、平日は若い方が多く、週末になるとファミリー層も加わります。これは世代間を超えることができる場所でもあるので、いろいろな世代の方にFirsthandに興味を持っていただき、背景には環境配慮があるということを伝えられるようになれたらいいですね。

―実際、どういったお客さんに来ていただきたいですか?

とにかくいろんな人に来てほしいです。そしていろんなお客様からそれぞれが持っている価値観を学ばせてほしいです。その学びを次に活かしたいと思っていますので。

この取材時にも、ウィンドウから覗く一風変わった他のショップにはない什器に引き寄せられるようにお客さんが入店されていました。

福留聖樹(フクドメセイキ)
1990年代にTUBE斎藤久夫氏のアシスタントを務めた後、欧州を拠点とし活動。2006年より国内ブランド、大手セレクトショップに在籍。2018年にデイトナ・インターナショナルに入社し、現在はSBU事業部にて、サスティナブルコンセプトストアFirsthandのコンセプター、渋谷PARCO内のスタジオ2Gのディレクターを務める。


Photograph:Tomohiko Tagawa
Edit&Text:PineBooks inc

人気記事

あなたへのオススメ