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渋谷初となる醸造所を併設するビストロで新たなワインとの接し方を見つける平光隼士と渋谷ワイナリー東京

「深川ワイナリー東京」「大阪エアポートワイナリー」と都市圏内でワイナリーを運営するスイミージャパンが、さまざまなカルチャーの発信地である渋谷にオープンさせたのが、『渋谷ワイナリー東京』。都心では見ることのできない醸造所を併設するビストロから、ワインを通じてどういった想いを届けたいのでしょうか? また、MIYASHITA PARKという商業施設に出店した意義とは? 店長を務める平光隼士さんに本店舗の意図を代弁していただきました。

ワイナリーとして最先端であるために
いろんなチャレンジをしたい

ワインの材料である葡萄の生産地にはなりづらい都心で醸造施設を備えるビストロは、若い層が多く訪れる渋谷という街にどう溶け込み、どのような化学反応を起こそうとしているのでしょうか? また、こだわりの詰まったワイン、厳選された食材から作られる料理とのマリアージュは、どういう文化を新しく構築していくのでしょう。

―渋谷ワイナリー東京のコンセプトから伺わせてください。

渋谷ワイナリー東京を運営するスイミージャパンでは、“コトづくり”をコンセプトとしてさまざまな事業を行っております。その“コトづくり”を可視化させるために行っていることのひとつとしてワインづくりがあります。そこで、醸造タンクが見えるビストロを第一のテーマとして渋谷ワイナリー東京をスタートさせました。
深川ワイナリー東京から始まって、大阪エアポートワイナリー、そして渋谷ワイナリー東京を渋谷のランドマークであるMIYASHITA PARKに出店するのはとても悩んだのですが、都市型の醸造施設によって若い方にも気軽にワインと触れ合ってほしいという想いから出店を決意しました。

―醸造所には気候や気温といった条件は、影響はないものなのでしょうか?

醸造するだけでいうと気候はほぼ影響しません。もっと大きな施設になると空調などの設備で気温や湿度などを管理しなければならないと思いますが。ただ貯蔵となると、気候や気温が大きく影響するので都市では難しいかと思います。なのでこの店舗では貯蔵ができない分、フレッシュなワインを提供することに重きを置いております。できあがったものをすぐに飲んでいただくことを想定して、味もそこに焦点を当てています。

―MIYASHITA PARKという商業施設に出店されるのは初めてかと思うのですが、経緯を教えてください。

施設側からの要望ということもありましたが、渋谷のランドマークである宮下公園に付随する施設に出店することで、新しいフラッグシップになるようなお店にしたいという思いがあり、出店を決意しました。ワイン離れをしているような若い世代の方にもワインを身近に感じてほしいという願いもあります。また、車でなく電車でも訪れることができる身近なワイナリーとして、グループ全員で楽しめる施設にしたいという思いもあります。

―多くの若い世代が訪れるこのMIYASHITA PARKで、ワインに触れたことがなかった人がワインへ繋がることの入口になったらいいですよね。提供されるワインのこだわりを聞かせていただけますか?

フレッシュなワインですとお料理に合わせにくいという声も聞きますが、当店ではお料理とのペアリングなどのご提案もさせていただいております。あとはご年配の方々で、長年ワインに親しんで重たいワインを好まれる方には、フレッシュなワインでは物足りない方もいらっしゃるのですが、そういった方々にも楽しんでいただけるようなペアリングも考えております。若い方だとお酒に飲まれてしまうこともあるかもしれませんが、お酒は楽しむためのおともだと思うので、楽しめる場になるためのワインを提供しております。
あとはエノログ(ワイン醸造技術管理士)がいますので、日々状態の変わる生き物のようなワインの変化を素早く察知し、思い描く味わいにワインを近づけることによって、より多くのニーズにお答えできるワインに仕上げることができます。
渋谷という街で求められるワインの味をどんどん変化させ、そして進化させてさまざまなお客様に楽しんでもらえるようにしたいと思っております。

―今回おすすめしていただいたこちらのワインとお料理について聞かせてください。

お料理は、渋谷ワイナリー東京の煮込み料理ということで、季節によって変わるものをご用意させていただきました。冬は“牛ほほ肉の赤ワイン煮込み”をご提供させていただいております。4時間以上しっかり煮込んで、スプーンでも切れるくらい柔らかくなっております。季節を感じる柚子などを散らしているので、一般的なワイン煮込みよりも軽やかな味わいになっております。そこに当店で醸造した赤ワインのシラーズをペアリングさせました。海外産のシラーズは、スパイシーでどっしりとした重さがあるのですが、当店のものは熟成年数が少ない分、スパイシーさが和らいで優しい口当たりになっております。お料理もワインも優しい味わいなので、とても良くマッチするかと思います。ビールでよく見るサーバーでワインを注ぐので、ちょっとした微発泡を感じてもらえるのも珍しい特徴です。微発泡によって飽きずに飲んでいただけると思うので。
渋谷はフレッシュな方が多いので、フレッシュなワインを飲んでいただくという相乗効果も生まれたらいいですよね。店外の樽をテーブルにした席で気軽に飲んで、それから他店舗を見て回る、といったことも楽しんでほしいです。
そして何より、山梨や北海道といった場所でしか見ることができないワイナリーを身近に見てもらうことができるのも大きな魅力だと思いますね。

―深川店や大阪店にはない特徴はありますか?

壁のレンガ調のあしらいで地下の貯蔵庫をイメージしています。それでもガラス張りの店舗なので、ワイナリーとして認知してもらえるような設計になっています。
オリジナルのワインのラベルも、深川店はワインマンというキャラクター、大阪店は空港にある店舗なので飛行機、渋谷は渋谷の街のイラストが描いてあります。ラベルの下に描いてあるアルファベットが、こちらで醸造したワインのボトルをすべて揃えると“S H I B U Y A”となるようになっております。

―渋谷ワイナリー東京にはどういったお客さんに訪れてほしいですか?

幅広くいろんなお客さんに来ていただきたいですね。まだお酒に慣れていない方でも楽しんでいただけるライトなワインが揃っているので、やはり若いお客様、20代の方に気軽にワインを楽しんでいただきたいです。あとは、渋谷に住んでいる方には来ていただきたいです。店内で醸造しているワインの熟成具合が日によって少しずつ変わっていくので、1週間前に飲んだ味と1週間後に飲んだ味の変化を楽しんでほしいためです。近くに住んでいる方に「今日のワインはどんな感じ?」と気軽に寄っていただきたいですね。そして、仕事終わりの方もふらっとカジュアルに寄っていただけたら嬉しいです。ワイン1杯だけ飲んでタイムラグなくすぐに帰ることもできますので。ご年配の方には、新しい都市型のこんなワインもあるんですよ、ということを伝えたいと思っています。最近、ニューヨークのブルックリンで、ルーフトップレッツという造船所の屋上で葡萄を栽培して、すぐワインを醸造してフレッシュなワインを提供しているところがあるのですが、そういったトレンドがあることもお伝えしたいですね。

―海外では、仕事帰りにさくっと軽くワインを1杯飲んで帰ったりする習慣もありますよね。日本ではまだちょっと構えてしまっていて、ワインを飲むということにハードルの高さを感じている方もいます。その壁を打ち破るようなお店になってほしいですね。
最後に、渋谷ワイナリー東京でこれからやってみたいことや、MIYASHITA PARKに期待することはありますか?

MIYASHITA PARKには、渋谷の新しいランドマークとしてずっと存在し続けてほしいですね。ここには他の施設にはない公園もありますので。渋谷ワイナリー東京としては、常に最先端であり続けたいと思っているので、新しい試みにもどんどんチャレンジしたいです。今後、ワインの樽の木くずを燃やしたものをティーポットで濾して飲んでいただくワインをスタートさせる予定です。お店では熟成期間を長くすることができないので、ワインに樽の木の香りがつきづらいのですが、ちょっとした工夫で楽しんでもらおうと思っています。いろんなカルチャーが生まれる渋谷という街なので、“コトづくり”でいろんなチャレンジをして、葡萄での“モノづくり”をやって、食の文化に新しい風を吹かせたいですね。

ワインの新しい嗜み方を開発したり、オリジナルワインへのこだわりを突き詰めたりすることで、さまざまな人にワインの魅力を伝えたいという平光さん。

平光隼士(ヒラミツハヤト)
さまざまな飲食事業での経験を経て、株式会社スイミージャパンに入社。ホールも調理も担当してきた実績を活かし、渋谷ワイナリー東京の店長を務め、新しいワインの楽しみ方を追求するために挑戦を繰り返している。まだワインに馴染みのない方は、ぜひ気軽に声をかけて、ワインの素晴らしさに触れてみてください。


Photograph:Tomohiko Tagawa
Edit&Text:PineBooks inc

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