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パリに拠点を構える泉栄一の心地よさを表現するMINOTAUR INST.

テクニカルな素材やギミックで、ミニマルながらも多種多様な人の生活に寄り添うウエアを展開する「MINOTAUR」。今回はMIYASHITA PARKに出店した『MINOTAUR INST.』にて、ディレクターの 泉栄一さんの想い、そしてMINOTAURの想いを、どういった形で伝えていきたいのか。さらにはパリと東京を股にかける泉さんならではの視点で、現在のファッションの在り方についても伺いました。

今の時代だからできる変わる部分と
普遍性の変わらない部分を共存させている

「ギャラリーをイメージした」という開けた店内には、アートやオブジェが並んでいるかのように統一感のあるカラートーンのウエアがディスプレイされています。そのMINOTAUR INST.をイメージから形にするのが泉さん。長年ファッションと関わり、パリと東京という2拠点で生活する泉さんが、コロナ禍においてファッションというものの在り方をどう見ているかも語ってくださいました。

―改めてMINOTAUR INST.のコンセプトを伺ってもよろしいでしょうか?

“心身ともに快適なプロダクトウエア”と打ち出しています。体の快適はわかりやすく伝えやすいんですけど、僕にとっての心の快適は、時代性にマッチして、シチュエーションに対して浮かずに自分らしさを出して自然体でいられるということなんです。体の快適と心の快適、その両方が 揃ったものこそ快適な服だと思っています。極端に言うと、二日酔いの日にすぐ手に取りたくなるような服(笑)。様になるし、着ていて楽、というか。あと旅行の時とかに着たくなる服ですかね。

―セレクトショップのバイヤーからスタートしたキャリアをお持ちですが、いつくらいにご自身でブランドをやりたいと思われたのでしょうか?

子どもの頃、遠足の時などに友達が持っているものと同じものを持つのが嫌になって。だから服とかも自分で作ったりもしていました。7、8歳から(笑)。親が買ってくれたものを改造したり。そこからMTVとか海外の音楽番組を観るようになって、PVに出てくるミュージシャンってなんでこんなにかっこいいんだろ!? とか、TDKのCMに出ているウォーホルや、バスキアとかキース・ヘリングがなんでこんなにかっこいいんだろ!? って思い始めてから、その方たちのように自分らしく時代を表現する人になりたいと思い始めたんです。マセガキでしたね(笑)。突然知らないところまで自転車に乗って行ったりしてたし、自分らしさを探す旅みたいなことを幼い頃から始めていたんだと思います。それが大人になっても続いた結果だと思うんですよね。

―そんな小さい頃からファッションへ興味を持ち出したんですね! そんな長いキャリアで培われたセンスを持ってスタートしたMINOTAURの代名詞と言えば、機能的、テクニカルなウエアだと思うんです。そういったテクニカルなウエアは、この渋谷という街との親和性はどこにあると思われますか?

今、僕は拠点をパリに移したんですけど、パリにしても渋谷にしても交差点というか、いろんな人たちが交差して新しいことを受け入れたり変化したりする場所だと思うんです。そこで機能ウエアはいろんなシチュエーションに対応できるものなので、マッチしやすいと考えています。機能ウエアもどんどん進化していて、生地のレベルも上がってきているので、テクノロジーの集大成みたいなイメージが強いと思うんですけど、服ならではの昔からの良さを活かしたものもたくさんあるんです。そう考えると、若い方やいろんな人種の方が集まって常に新しいことが生まれ続けているイメージが強い渋谷でも、古き良き場所も残ったりしてて、それが混ざった感じは機能ウエアの在り方と似ているのかもしれませんね。僕が作る服も今の時代だからできる変わる部分と普遍性の変わらない部分を共存させているつもりなので。

―全体的に黒のウエアのイメージが強いんですが、それって意図があるのでしょうか?

実際は、黒というよりもグレーとか紺も多いんですけど、これが先ほど言った、心身ともに快適な服、に繋がって、服を選ぶのに迷うことにあまり時間を使って欲しくないんです。コーディネートを選ぶ時間を他のことに使って欲しい、というか。温かい寒いに対しても楽にしたいし、見た目を決めることも楽にしたい。今はNetflixを観たり、SNSで情報を得たり、いろんなことに時間が必要だと思うから、せめて服を選ぶ時間は短くしてあげたい。そう考えた時に、黒やグレーや紺は誰でも合わせやすいし、サッと着るだけで様になると思うので、おのず とそういうカラーになっていきました。RSパンツというパンツがあって、Relax Smart パンツの略なんです。これはまさにリラックスしながらもスマートでいられることを追求したものなんですよね。

―MIYASHITA PARKのMINOTAUR INST.でこだわった点などはありますか?

偶然向かいがSAI TOKYOというギャラリーだったのですが、ギャラリーみたいな内装にしたいと思っていたんです。ブランドとしてもショップとしても常に変化していたいので、ギャラリーは飾られる作品によって変わり続けるじゃないですか。なので什器は可動式にしています。あと、ここ数年、無造作な何もしてない感ブームな気がしていて。その無造作の良さが施設自体にも表現されているので、その中にあるショップとしての無造作の表現としては博物館とか美術館みたいな、無機質だけど有機的なものが整って並んでいる感じを出したかったんです。


ー向かいのSAI TOKYOと通路を挟んで一体感あるようにも見えますよね(笑)。どちらにもフラッと寄ってしまいそうで。

そうですね(笑)。

―そして、昨今のトレンドというか、これからファッションシーンにおいても必須事項となるサスティナブルですが、MINOTAUR INST.としては、どう捉えて、どう向き合っていこうと思われていますか?

僕もそうだし、みなさん、小さい頃から食べ物を粗末にしてはいけません、とか言われてきたじゃないですか。それもサスティナブルだと思っているので、誰もがそういったことは大なり小なり心に持っていると思うんです。今はそれが単語として出てきて、具体的になったのでみんなが意識し出したと思うんですけど、僕はあからさまに何かやるというのではなく、できることを日常から始めたいと思っていて。だから日常で食材を余らせないことを意識するように、服作りでも生地を余らせないようにするというのは当たり前だと思うし。だから行ったことのない国とか地球全体をもっと俯瞰することを意識したら、その習慣に大きさや継続性に違いが出てくると思っています。服作りのビジネスとして(サスティナブルを)謳うよりも、まず は人として意識してグローカルに持続可能かつ、良い未来をみんなと創っていけたらいいですよね。

―心身ともに快適であるためのウエア、がコンセプトになっているのも、シチュエーションごとに服を変えなくてもいい、ということも含んでいると思うんです。それってすごくサスティナブルな発想にもなりますよね。

そうですね。さっき言った服を選ぶことの時間を少なくするのは、時間のサスティナブルでもありますよね。“豊か”の基準は人それぞれの価値観で違うと思うんですけど、僕にとっての“豊か”は物質的なものよりも、時間とか想いとかの充実度なので。

―パリと東京を行き来される泉さんから見て、このコロナ禍におけるファッションの意味合いや在り方は国によって違いを感じられますか?

うーん、もともとコロナになる前から、パリと東京で仕事をしていたのもあって、リモートワークが主体だったんですよ。だから僕の場合は、そんなにファッションの意味合いも変わらないというか。でも、それこそ自宅で仕事をする方も増えるので、心身ともに快適なウエアは求められるんじゃないですかね。

―楽でいながら様になるMINOTAUR INST.の服がまさにそうですもんね。

僕はもともとTPOをわきまえる、ということの逆を表現したいと思っていて。どこでも同じ服だけど、どんなシチュエーションにも時間にもフィットして、着ていて楽で、見た目はスマート、みたいな。そのための機能を備えた服というか。日本には優れた機能素材が豊富に選べることもあって。

―このMIYASHITA PARKのショップにはどんなお客さんに来て欲しいですか?

子どもからお年寄りまで、洋服にお金をかけられる方から、かけられない方まで来ていただきたいですね。やっぱり、ショップはネットとは違って、偶然人と人とが会うことで生まれるものがあるので。前提として買う買わないではなく、新たなファッションの価値観を体験してもらう場作りです。以前、中目黒にあったお店は、MINOTAURを目掛けて来てくださる方が多かったんですけど、このMIYASHITA PARKのショップは、他の目的で訪れた方が気軽に入ってくることができますからね。なので、お店やブランドを通じて実験をやりたいという意味も込めて、MINOTAURの後に研究所という意味のINSTITUTEの略、INST.をつけたんです。このショップを使って、専門の方と一般の方の垣根もなくした展示会なんかもやりますし、僕がその場でものを作ったりとかのプレゼンテーション的なこととか、公開型のショールームとして購入することも可能な境目のないフラットな環境で体験していただき、気付きがある場にしたいんです。買い方も新しいテクノロジーを導入したりして。今はそれを考えることを楽しんでいます。
あと、どこでも移動できてショップにできる什器とかもテントメーカーさんと制作し揃えているので、屋上の公園でショップとかをやってみたいですね。屋外と屋内でまた違った見え方にもなると思うので。

幼い頃から工作感覚で洋服をアレンジしていたという泉さん。MINOTAUR INST.でも表現する自分にフィットするものへの探究心は、小さい頃から自然に植え付けられたものだという。

福岡の老舗セレクトショップ、Dice&Diceのバイヤーからキャリアをスタートし、その審美眼で全国から注目される。2003年FONT CO.,LTD設立後、2004年にMINOTAURをスタート。2018年拠点をパリへ移し、その後グローバル企業の企画デザインを手掛ける会社FONT PARISをフランスで設立。現在はパリをベースにMIYASHITA PARKと福岡の2店舗を構え、大手メーカーのSONY、Panasonicのユニフォームデザインや、国内外の大手企業アドバイザーやディレクターを務めるなど、その活動は多岐に渡る。

Photograph:Tomohiko Tagawa
Edit&Text:PineBooks inc

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