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日本特有の文化も取り入れながら五感で楽しめるショップを目指すKITH TOKYO俣野純也

ロニー・ファイグ氏がNYでスタートさせた「KITH」。その日本初となる旗艦店、『KITH TOKYO』が昨年MIYASHITA PARK内にオープンし、スニーカーヘッズはもちろん、ファッションアディクトたちの注目の的となった。本国のKITHから継承していること、渋谷に居を構えるKITH TOKYOならではの発信……などについてディレクターの俣野純也さんが語ってくださいました。

KITHは、エクスペリエンス、
つまり体験型のストアを目指す

外観からも覗き見ることができるスニーカーのカスタムアートがずらりと並ぶオブジェやロニー氏が手掛けたコラボレーションアイテムが陳列されるアーカイブタワーなどは、誰しもの目を引くもの。新作スニーカーはもちろん、オリジナルアパレルからメゾンブランドのアクセサリーまでところ狭しと並ぶ店内はまるで博物館のよう。その指揮をとる俣野さんは、このKITH TOKYOにどんな存在になって欲しいと思っているのでしょうか?

―日本初のショップとなるKITH TOKYOが本国アメリカのショップから踏襲している部分とはどのようなところになるのでしょうか?

まずは正面入口を入っていただいた時に出てくるドーム型のエクスペリエンスを感じさせるインスタレーションですが、ダニエル(・アーシャム)率いるデザインチームの制作によるもので、これは世界中の全店舗が踏襲しているデザインとなります。本国はエア・ジョーダンのシリーズですが、KITH TOKYOはエア・フォース1をモチーフにしています。あとは大きなファサードがKITHの特徴でもあるのですが、ソーホーのショップの大きさとKITH TOKYOのファサードの大きさはまったく同じなんです。

―そうなんですね。それでは逆に他の店舗と異なる部分や、KITH TOKYOならではのこだわりを感じるポイントはありますか?

フットウェアのところを見ていただくとシューズが天井高くまで並んだガラスのタワーが見えるかと思うんですが、これはロニーがこれまでにコラボしたフットウェアで、このアーカイブを一挙に見ることができるのはKITH TOKYOだけなんです。資料としてすべてが揃っているのはウチだけなので、ファンの方からしたらたまらないショップだと思います(笑)。ある意味、美術館のような感覚でスニーカーを買うだけでなく、アートのように見ていただけるショップになっています。しかもあのタワーは中のシューズが入れ替わったりもするので、飽きずに何度もご来店していただいているファンの方もいらっしゃいます。また、KITHといえばカララ大理石を使った床や壁がアイコンですが、KITH TOKYOではマルチカラーの大理石を使用しています。その点もKITH TOKYOならではですね。

―そういったこだわりは俣野さんからアイデアを出されるのでしょうか?

僕がというよりも、ロニーは東京に特別な想いを持っています。何度か東京に来て、常に新しいファッション性やカルチャーを生み出す街ということを理解した上で、東京店では新たな試みをやりたいということがあったんだと思います。彼は、KITHを始めてから東京に出店したいという気持ちがずっとあったので、それが叶うことになって、やはり他のショップとは違うことも入れたかったんだと思います。スニーカーのカスタムアートにKITHのアパレルコレクションのパントーンカラーを使ったり、色があるものを取り入れているのも特徴ですね。

―そういうカラーチャートで遊び心を出せるのもスニーカー文化ならではという感じもしますね。

そうですね。その中にロニー独自の洗練された、品の良さも表現されていると思います。

―日本での出店を計画した時に、海外から見てもファッションやスニーカーというカルチャーの代表的な街といえば原宿というのが思い浮かぶと思うんですが、この渋谷という街、そしてMIYASHITA PARKという施設内での出店となった経緯をお聞かせください。

おっしゃる通り、海外の方から見た時、やはりファッションやスニーカーというストリートカルチャーといえば原宿だと思うんです。現在、KITHというブランド・ショップは大きく成長して、ファッションとスニーカーという2つに捉われることなく、エクスペリエンス、つまり体験型のストアを目指していて。そういった意味でも、MIYASHITA PARKも渋谷の中心にあって、必ずランドマーク的な存在になるとロニー自身も確信したので、渋谷、そしてMIYASHITA PARKに出店することを決めました。あとは、並びにハイファッションがあることでKITHブランドがより個性を発揮できるということもひとつの要因です。さらに、ブランドを通じてエクスペリエンスを大切にしている私たちにとって、自然に溢れた公園が屋上にあるということはとても大きな魅力でした。

―かと言って原宿と完全に切り離された場所ではなく、渋谷駅から原宿へ向かう動線上に建っている施設でもありますもんね。

そうですね。その流れの中での象徴になればいいとも思っていますし、なれるとも思っています。

―このKITH TOKYO発信のオリジナルアイテムやコラボレーションアイテムなどもあるのでしょうか?

KITHが東京にできたことは大きな意味があることだと思うので、日本のカルチャーやアート、ブランドなどいろんなことをKITH TOKYOをというフィルターを通して世界に発信していきたい、という想いはあります。それとは逆に世界のいろんなカルチャーをKITH TOKYOを通して東京、日本全国、さらにはアジア圏にも伝えていきたいとも思っています。そういう場所になれるショップだと確信しています。

―俣野さん個人として、本国のKITHとは違った、東京ならではの、渋谷ならではのアプローチの発信を考えたりしますか?

そうですね。やっぱりいろんな角度で見せていく必要があると思うので、大前提としてKITHというブランドの発信ではあるんですけど、僕らを通すことでアジア圏の人たちにどう感じてもらえるかを考えながら発信しなければならないと意識しています。
本国の組んだルックを伝えることはもちろんですが、日本ならではの着こなしも併せて提案していきたいとも考えています。KITHというブランドは日本ではまだまだ知らない方が多く、いわゆるストリートブランドと捉えられがちだと思います。
しかし、アメリカではその枠を超え、体験型のショップであり、ライフスタイル全般を補えるブランドとして捉えられています。日本でもそのようなブランド、ショップなのだということをKITH TOKYOでしっかり伝えていきたいと思っています。


―1階にはシューズとアパレル、上の階にはキッズアイテムを取り扱う「KITH KIDS」とシリアルバー「KITH Treats」があります。もちろんスニーカーヘッズのお客様も多いと思うのですが、どういったお客様に来て欲しい、などはありますか?

確かにスニーカーヘッズの方には多くご来店をいただいていますが、エクスペリエンスを大切にしている私たちにとって、お店に入った瞬間に感じるKITHオリジナルの香り、気持ちを高揚させる音楽、そしてミュージアムのような内装を見ていただく。さらに、2階に上がっていただくとここでしか味わえないシリアル入りのアイスクリームやシェイクを食べることで、五感に響く体験をしていただくことができます。これらのエクスペリエンスを、幅広い世代のお客様に楽しんでいただきたいと思っています。

―屋上に公園があるのもMIYASHITA PARKならではで、キッズのコーナーを設けられたり、ウィメンズのアパレルを手に取りやすいショップになっているのかとも思うんですよね。

ロニーがMIYASHITA PARKに出店したいと思ったことのひとつが、屋上に公園があるということでした。ファミリー層のお客様がウィメンズやキッズの商品を見て、さらにはKITH Treatsのアイスクリームを持って開放的な公園で食べられるという連動性が魅力でした。また、他複合施設とは違うMIYASHITA PARKの大きな魅力として、屋外に面している部分が多いことで圧迫感がなく、開放的なことがKITH KIDSやKITH Treatsの魅力をより引き出しています。

―KITH TOKYOで今後やってみたいことや、MIYASHITA PARKに期待することなどを聞かせてください。

まずは、KITHがNew Yorkで10年間かけて築き上げてきたことを日本及びアジア圏の方たちにしっかりと伝えていきたいと思っています。また、コロナが収束した際にはMIYASHITA PARKと連動した屋外イベントなどもぜひ取り組みたいと考えています。

「自分はスニーカーショップの出身ではないから、他とは違った発信ができると思うんです」と語る俣野さん。KITH TOKYOが多種多様なアプローチでファンを魅了しているのはそれが大いに関係しているように思えました。

2011年にロニー・ファイグによって創立されたKITHはラグジュアリーマーケットにおけるオリジナルブランドとセレクトという2つの側面を持つ新たなショップである。現在はオリジナルのメンズ、ウィメンズ、そしてキッズに向けたプレミアムなアパレルとキャップ、バッグなどの小物類を展開する。現在はニューヨーク、ブルックリン、マイアミ、ロサンゼルス、ロンドン、パリ、そして東京にストアを展開している。2020年にMIYASHITA PARKにオープンしたKITH TOKYOのディレクターを務めるのがこの俣野氏である。


Photograph:Tomohiko Tagawa
Edit&Text:PineBooks inc

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